生命保険は相続税の節税として用いられるほか相続税の納税資金として利用されます。
納税資金を確保するためにお金を貯めるには期間がかかりますが、生命保険であれば加入時から納税資金の準備ができます。
ただし、生命保険金も『500万円×法定相続人の数』を超えますと、その超える保険金額が相続財産に織り込まれますので、財産が多い方ほど高率の相続税が課せられます。
また、終身払いで支払期間が長くなりますと、生命保険金の額が支払保険料の累計を下回る可能性もあります。
具体的に生命保険金の利用金額として妥当な金額は、配偶者の有無や子の相続人の人数によりますが、1次相続(配偶者がいる場合)で4~5億円、2次相続(配偶者がいない場合)で2~3億円程度まででその範囲内ならば生命保険金でロスなく納税資金が準備でき、相続財産が無傷で残りますので有効な手段となります。
★納税資金確保に必要な保険金額表(平成26年以前の基礎控除及び税率に基づく)
配偶者がいる場合(配偶者1/2)
相続財産 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
---|---|---|---|
2億円 | 1,296 | 950 | 812 |
3億円 | 3,375 | 2,470 | 2,000 |
4億円 | 5,875 | 4,591 | 3,848 |
5億円 | 8,375 | 6,937 | 5,970 |
配偶者がいない場合(配偶者1/2)
相続財産 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
---|---|---|---|
1億円 | 625 | 350 | 200 |
1.5億円 | 2,833 | 1,250 | 900 |
2億円 | 6,167 | 3,143 | 1,875 |
2.5億円 | 9,500 | 5,667 | 3.643 |
(単位:万円)
各々の相続財産額に対し、納税額を充足するために必要な保険金の額を逆算で算出した表です。
例えば、相続財産が3億円で子が2人の場合、2470万円の保険金に加入しますと、相続財産3億円+課税される生命保険金970万円(2,470万円-非課税500万円×3人)=課税財産3億970万円に対し、配偶者が1/2の財産を取得した場合における子の相続税2,470万円を充足するという表です。 |
相続税は金銭での一括納付を原則としますが、相続財産が金融資産だけに限らないため、金銭で一時に納付することが困難とされる場合も考えられます。そのため納付の特例として一定の要件のもとに延納(年々の分割払い)が認められています。
納付すべき相続税額が10万円を超え、かつ、納期限までに金銭で納付することを困難とする事由がある場合において、納税義務者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、年賦延納の許可を受けることができます。
延納を受けるには、その延納税額に相当する担保を提供しなければなりません。ただし、その延納税額が50万円未満で、かつ、その延納期間が3年以下である場合は必要ありません。
延納の許可を申請しようとする者は、金銭で納付することを困難とする金額及びその困難とする理由等を記載した申請書に担保提供書類を添付し、その納期限までに納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
延納の許可を受けた者は、分納税額を納付する場合、延納期間は一般の動産等に対応する相続税額については5年間(利子税の割合は年6.0%)です。不動産等の占める割合が50%以上であれば、不動産等に対応する相続税額について15年から20年(利子税の割合は年3.6%)、動産等に対応する相続税額については10年(利子税の割合は年5.4%)となっています。
(ただし、利子税の割合について延納特例基準割合(基準貸付利率(公定歩合)+4%)が年7.3%に満たない場合には、次の算式により計算した割合によります。)
算式
相続税は金銭で一時に納付することを原則としますが、取得した財産の性格上、その課された相続税を一時に金銭で納付することや年賦延納で納付することが困難な場合が考えられます。そのため納付の特例として一定の要件のもとに物納が認められています。
納付すべき相続税額を延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合に納税義務者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、物納の許可を受けることができます。
物納に充てることができる財産は、納税義務者の課税価格計算の基礎となった財産(ただし、「相続時精算課税適用財産」を除きます)で次に掲げるもの(「管理処分不適格財産」を除きます)とします。
第一順位 不動産、国債、地方債、上場株式等
第二順位 非上場株式等
第三順位 動産
物納の許可を申請しようとする者は、その物納を求めようとする相続税の納期限までに金銭で納付することを困難とする金額及びその困難とする理由等を記載した申請書に物納手続関係書類を添付し、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
物納財産の収納価額は、課税価格計算の基礎となったその財産の価額によります。
ただし、税務署長は、収納の時までにその財産の状況に著しい変化が生じたときは、収納の時の現況によりその財産の収納価額を定めることができます。