被相続人の預金口座は、被相続人の死亡の通知とともにその出し入れができなくなります。その口座は相続人からの一定の届出がでるまで、凍結された状態のままです。
相続人は相続人全員の合意で、次のような書類を用意して口座のある金融機関の支店で手続きしなくてはいけません。
相続人は相続人全員で相続人のうち誰がどの預金を相続するかを記した「相続関係届出書」に署名押印(実印)し、他の書類とともに金融機関へ提出します。金融機関により書類は、多少異なりますが、金融機関は、相続人のトラブルや面倒を避けるために相続人全員の合意を必要としています。
被相続人の戸籍謄本は出生時以降、死亡時までのものが連続して必要です。相続人の方の戸籍謄本は基本的に現在の戸籍謄本で結構です。これらの戸籍謄本の原本を金融機関に持参し、写しを取ってもらいます。原本を返却してくれる金融機関もあれば、そうでないところもあります。
また、相続人全員の印鑑証明書はこの手続きの申請をする3か月(又は6か月)以内の発行によるものが必要とされています。
「遺産分割協議書」ですが、実際の手続きにおいては、相続人全員で合意した「相続関係届出書」があれば、遺産分割協議書が無くても構わないようです。金融機関としては、相続人全員の合意で作成されたことが確認できれば、遺産分割協議書の提示まで求めていません。
また、遺言がある場合は遺言書(自筆証書と秘密証書については家庭裁判所が検認した遺言検認調書も必要です)が遺産分割協議書の代わりになります。
遺言書や遺産分割協議書がある場合には、遺言執行者や該当する受遺者あるいは相続人だけの署名押印で済む金融機関もありますのでご確認ください。
以上のような手続きとなりますが、金融機関によってそれぞれ書類や名称、その手続きに若干差異がありますので、口座のある金融機関の各支店へお問い合わせください。
相続時の被相続人の預金について、金融機関に各預金の残高の証明書を発行してもらう手続きです。
この残高証明書の発行は、相続人であることの証明が必要となりますので、そのことが分かるための相続人の戸籍謄本と併せて印鑑証明書が必要です。
上場株式を相続人の口座へ移管する手続きです。証券会社に保護預りをしている場合や保管振替制度を利用されている場合には証券会社で手続きします。
手続きには、次のような書類が必要です。
「遺言書」で遺言執行人が選任されているときは、その遺言執行人の自署押印。選任されていないときは、受遺者の自署押印。「遺産分割協議書」がある場合には、株式を相続する相続人の自署押印で済ますことができる証券会社が多いようです。
「遺言書」も「遺産分割協議書」もない場合には、相続人全員の「相続手続依頼書」への自署押印が必要です。
遺言書や遺産分割協議書の有無によって、次のようになります。
(1)遺言書がある場合・・・公正証書遺言の場合は遺言書のみ、公正証書遺言以外の遺言の場合はその遺言書と家庭裁判所の検認調書が必要です。
(2)遺言書でなしに遺産分割協議書がある場合・・・遺産分割協議書があれば、その遺産分割協議書を用います。
(3)遺言書も遺産分割協議書のない場合・・・相続人全員で「相続手続依頼書」に署名押印します。
相続人に口座がない場合は、併せて口座を設けていただく必要があります。また、株式を現物でお持ちの方の場合は、株式の名義変更を行うため、名義書換代理人として指定された信託銀行で名義書換えをしていただきます。株券や株式名義書換請求書に証券会社と同様に必要な書類を併せて提出してください。
概ね、以上のような手続きとなりますが、証券会社によってそれぞれ書類や名称、その手続きに若干差異がありますので、株券を預けている証券会社の各支店へ問い合わせください。
土地や建物を相続した場合には、相続登記の申請書として、次のような書類が必要となります。
1の必要書類を取り揃えて申請しなければなりませんが、戸籍謄本は相続人関係図か戸籍謄本の写しを提出すれば、また、遺産分割協議書、印鑑証明書、住民票や遺言書についてはその写しを添付すれば、それらの書類の原本が登記の完了した時点で返却されます。
登記申請書に「登記済証」と記載されたものを「登記済証」と称し、俗に「権利証書」と呼ばれます。これは、平成18年度から順次登記識別情報に置き換えられ廃止されました。
登記の申請がされた場合に、登記申請人に対し通知される登記情報で、不動産の権利者に付与される証番号が記載されているものです。登記済証に代わるもの(いわゆる権利証書ではありません)となっており、アルファベットと数字の12桁で構成され、それを所持(記憶)することが本人の確認手段の一つとなっています。
相続登記には、登録免許税という国税が課税されます。固定資産税評価額が課税価格でその金額の1000分の4の税額を納めます。
相続手続きに必要な被相続人の戸籍は、被相続人が生まれた頃からの連続した戸籍謄本を集めます。
これは、連続したすべての戸籍を取り揃えることにより、その被相続人の推定相続人である配偶者や子がすべて漏れなく現わされるからです(ただし、実際にその子供が生存しており、相続人になるかどうかは、子の方の戸籍を確認しなければなりません)。
相続人の現在の戸籍を揃えます。ただし、相続人が被相続人の死亡の前に亡くなっていれば、その相続人の生誕後の戸籍を取り揃えて、その相続人の子(代襲相続人)である相続人を確定させなければなりません。
戸籍には、「戸籍謄本」、「除籍謄本」及び「改正原戸籍」の3種類があります。
「除籍謄本」とは、その戸籍に記載されている方が転籍したり、亡くなったり、結婚したりして全員がいなくなった戸籍をいいます。
「改正原戸籍」とは、戸籍制度の統一や改正によって、戸籍が書き換えられたもので、その書換えされる前の戸籍を改正原戸籍といいます。最近では平成6年にコンピュータ化のため、その前は昭和23年に家制度から家族制度への変更のため改製されています。その前は大正4年まで遡ります。
戸籍が連続しているかどうかを確かめることは、なかなか困難ですが、一応の見方を示してみます。
例えば、その被相続人の戸籍が揃っているかどうかをみるとき、その者が誕生してから婚姻や離婚、あるいは養子縁組等の機会に戸籍が移動します。
その者の戸籍の変遷までの間がその属している戸籍の編製期間に含まれていますと、その間がその戸籍によって充足されますので、その変遷を充たす戸籍を順に揃えていきます。
その一方で、本籍地が変わったり、あるいは戸籍制度の改正による戸籍の改製が生じていますので、その分だけ揃える戸籍謄本等の数が増えることになります。
被相続人の戸籍を揃えるには、現在の本籍地の役所に「相続のために被相続人の誕生からの戸籍謄本を取りたい」と依頼すれば結構です。
ただし、転籍前の本籍地は役所の方では調べていただけませんので、戸籍謄本等を取って従前の本籍地を調べ、同様に従前の本籍地の役所に依頼します。
従前の役所が遠方であれば、郵送によって請求します。戸籍が何種類あるか分らなければ、余分に郵便小為替を組み、返信用封筒とともに送付します。お釣りは役所の方で返信用封筒に同封して返却してもらえます。万が一のためにこちらの連絡先の電話番号を入れておきましょう。
相続人のうちで、判断能力の不十分な方がいらっしゃる場合、その相続人の遺産分割に対する判断能力が欠けるため、その相続人に対して後見人や保佐人あるいは補助人を選任して、その後見人等がその相続人を代理したり、同意したりして分割協議を進めます。
「成年後見制度」は、本人の判断能力が十分でない場合に、法律的に保護する制度です。後見人等の仕事は、本人の身上看護と財産管理で、本人の判断能力の違いによって援助する人が次のように3つの種類に分かれます。
また、後見人等は、それぞれ援助者によって、その援助の仕方が変わります。
本人の家族や親族から家庭裁判所へ申立てを行います。申立てには、申立書とともに本人及び後見人等の候補者の戸籍謄本と住民票に、医者の診断書や財産に関する書類(不動産の登記簿謄本、預貯金の通帳や残高証明書、生命保険の証書等)等の添付書類が必要です。
申立て後、家庭裁判所による調査と主治医の鑑定を経て、審判によって後見等の決定をだします。この決定までの期間は2~3か月です。
これらの費用は、鑑定がいる場合(後見と補佐の場合)には10万円あまり見込む必要があります。
後見人等に選任された方が、一方で相続人であった場合、相続人である被後見人と利害が相反する関係になりますので、その被後見人の相続に関する後見としての代理や同意ができないことになっています。この場合には、別の人を「特別代理人」として立て遺産分割協議を行います。