狭義の相続(争族)対策とは、相続でもめないようにする、もめないための対策です。
その相続対策として法的効力のあるものは遺言書の作成で、遺言が相続対策の基本となります。
民法では、相続財産は相続人の分割協議により財産を相続しますが、法律的な観点から配偶者と相続人の関係でその相続分は決められています。ただし、この分割協議や法定相続分に優先するのが遺言書であり、被相続人の意志(遺志)である遺言書の内容が優先します。
遺言書で財産を受取る者が指定されていれば、相続人で協議する必要がなくなります。
その遺言書どおりに相続しなくてはなりません。
このように遺言書があれば、基本的に争族にならないのですが、遺言書に優先するものがあり、これが遺留分と呼ばれる権利です。
遺留分は相続人(兄弟姉妹を除く)に残された権利で、遺言書があっても、法定相続分の1/2(直系尊属だけが相続人のときは1/3)まで財産を得る権利です。自らに与えられた財産が少なければ、この遺留分の請求によって遺留分に不足する財産を得ることができます。
遺言書以外の方法で財産を指定することは認められていませんし、また、生前に相続の放棄をすることもできません。
唯一、推定相続人が遺留分の放棄をすることができますが、家庭裁判所で本人の意志を確認したうえで認められます。場合によっては遺留分放棄の取消しもあります。
以上のように、遺言書がもめないための必需品となっていますが、遺言する場合は各相続人の状況に応じながらも、遺留分を考慮した内容がもめずに済む方法といえます。
遺言書がもめないための必需品でありながらも、完全ではありません。遺言書があっても紛争になる場合があるからです。
もめることなく円満に相続されているところに共通していることは、生前中に被相続人から財産の相続について十分にその意志を聞かされていることです。
ご本人が推定相続人に対して、自己の財産を誰にどのように相続させたいか意向を述べ、その理由や各相続人への想いを伝え、それを各推定相続人が了解しています。
このように生前に本人の意志を伝え、それに対する十分な説明を行って納得をしてもらい、遺言書を作成すれば、もめることが予防でき、円満に相続していけるのではないでしょうか。