相続対策(争族対策)と相続税対策との関係は相続対策が優先すべきで、節税対策が相続対策に悪影響を与えてはいけません。
税金が安くなるより、相続人の間でのもめごとを防ぐことの方が重要です。節税策がもめごとの要因とならないようにしなければなりません。
相続が起こって、相続人間で分割協議を行い各相続人の相続分を決めますが、相続税が課せられる場合に、分割の仕方によって相続税が安くなることがあります。
そのようなときに、節税がもめごとの原因を作らないようにしなくてはいけません。
例えば、配偶者がいる場合に、配偶者の取得する相続分が法定相続分(又は課税価格1億6千万との大きい方)まで無税となっていますので、配偶者に法定相続分(子と配偶者が相続分のときは配偶者が2分の1)まで相続させることが多くあります。
この理由は配偶者にもとからの固有の財産がなければ、1次相続で配偶者が2分の1まで相続した方が、将来の2次相続と併せて1次2次を通算した相続税がもっとも少なくなるからです。
そのことから1次相続財産について、将来互いにどう相続するか合意していても、配偶者税額軽減で1/2配偶者に財産を持っていった場合に配偶者が亡くなった際どのように状況が変化しているかわからず、ときに1次相続での合意が守られず、2次相続で白紙の状態で話合いがスタートする可能性もあり注意が必要です。
相続税の節税の点から、養子縁組される場合がよくあります。養子によって基礎控除や法定相続人が増えることから節税になることは間違いのないところです。
ただし、養子縁組される際に、推定相続人全員に養子縁組することの了承を得るなり、少なくとも養子縁組することを知らせておかなければなりません。でなければ、養子と関係のない推定相続人にとっては自己の相続分が減ることになり、そのことでのちのちしこりが残り分割協議がスムーズに進まなくなってしまいます。
また、養子となれば実子と同様の相続分を持ちますので、養子本人がどのように相続権を主張するか予想できないところも注意点です。
生前に特定の者に金銭等の贈与を行ったり、相続税の節税の面から贈与をしたりすることがあります。
相続人に対する贈与で金額が大きくなれば、相続の際に特別受益として、相続財産に持ち戻しされます。ただし、その贈与の事実や内容、金額を巡って、相続人間の紛争の対象とされる場合がありますので注意しなければなりません。
また、贈与される財産が金銭でなく不動産の場合には、贈与する相手方に気を付けます。相続税の節税のために一つの不動産を複数の者に贈与しますと、その不動産を共有で取得することになりますが、兄弟で共有すればその不動産の運用管理に利害が一致せず困難な状況になってしまいます。
このように相続税の節税の点から、遺産分割に影響を与えることがしばしばありますが、節税がもたらす分割が相続人間のトラブルにならないよう十分に注意し、節税のメリット、デメリットやその内容をよく把握して分割を決めるべきでしょう。