相続対策の基礎

相続対策とは

相続対策は、広義には相続対策、相続税対策、納税資金対策の3つといわれます。
この3つの対策とは次の対策をいいます。

  • もめない為の相続(争族)対策
  • 節税のための相続税対策
  • 相続税の納税資金を確保する納税資金対策

1.相続対策

相続によって、財産を承継する代わりに相続人同士の絆を失う可能性があります。  

民法は人の財産の承継に関して、相続人について定めをおき、配偶者と配偶者以外の相続人の組合せによる相続分を決め、各々子や兄弟姉妹の権利は均等としています。  

しかしながら、戦前までは家督相続として家長となるべき者が財産を引き継いでいました。現在でも家を継ぐ者が財産を承継すべきだという考えがありますし、代々の財産を分散させたくないとの意向、あるいは他家へ嫁いだ者は財産を与える必要がないとの考えで、財産を少数の相続人に集中させる傾向があります。
そこまでいかないまでも、親と同居したり、親の面倒をみている相続人へ財産を多く相続させたいという意向もよくあります。 

ここに民法の定めと家制度との考え方とが対立し、相続人間の遺産分割に衝突をもたらします。それこそ、もめて当たり前の状態なのです。
この放っておけばもめることが多い相続の遺産分割に、もめないための対策や行為が必要となるのです。  

対策の筆頭が「遺言」です。これがあればもめることが減ると言われています。被相続人自身の意思を表した遺言書が遺産分割より優先し、相続人の最低限の権利である遺留分の権利を除けば、遺言書通りに財産が引き継がれ、相続人の間でもめることが少なくなる(決してなくなるとはいえないのですが・・・)唯一の法的な生前対策です。

2.相続税対策

画像:財産の量が減少×財産の質(評価)の低下=財産額の減少=節税

生前対策として脚光を浴びるのが相続税対策です。税金が少なくなればそれだけ手元に財産が残るのですから、誰もが望むことです。
この節税対策は、基本的には生前中に財産を移転させていく(財産を減らす)か、評価が減少する財産に組み換える(評価を落とす)かのいずれかです。
財産を減らすことは「量」を減少させ、評価を落とすことは財産を組み代えて評価という「質」を落とすのです。

この相続税の節税は個々の家の財産や相続人の状況によって異なるものですが、相続税対策に共通するものとして、「養子縁組」、「生命保険」、「贈与」、「管理法人」、「有効利用」等の利用があります。

3.納税資金対策

相続税の支払いが予想される場合、現時点で相続税が幾らになるか、その支払資金があるかを確認することです。  

そのためには、相続財産が幾らあって、どの程度の相続税が課せられるかを調べる必要があります。

そのうえで、まず相続財産の中の金融資産で賄えるかどうか、相続人の所有する金融資産で支払えるのかを確認します。

納税額に見合う金融資産があれば、ひと安心ですが、もし、なければどのように納税を準備するか検討する必要があります。

まず、考えられるのが生命保険による納税資金の準備です。生命保険に加入することにより、万が一の納税資金に充てることが可能になります。 ただし、生命保険へ加入するにあたっては、被保険者となる者の年齢制限があり、健康状態が悪ければ加入できなくなります。

預貯金がない、生命保険も加入できないとなれば、延納です。延納とは納期限までに一括して金銭での支払いができないときにおいて、できない金額の範囲内で年々の分割払いを認めるものです。
その相続人の相続した財産の内容によって、延納できる期間や利子が異なりますが、相続財産に不動産が多ければ最長20年までの分割払いが可能です。

延納でも支払いが難しければ、相続した不動産等を処分しての納税の検討となりますが、その場合の比較対象となるのが物納です。不動産を処分して納税するか、もしくは相続した不動産を納税に充てる物納を取るかは、経済的にどちらが得になるか検討して行います。