令和6年4月1日より3年以内の相続登記の義務化がスタート。
●令和6年1月9日
奥さんが障碍者。ご自身に万が一があると、奥さんの世話ができなくなる。遺言と任意後見と家族信託について説明。遺言執行者として奥さん方の甥が適任か。
●令和6年1月16日
母90歳代後半で今施設にいる。実家が福岡でご夫婦は神戸と福岡に居住、住民票は神戸に置いている。福岡の土地に小規模宅地の適用で同居とみられるかどうかの質問。
●令和6年1月17日
独身の方 お姉さんと同居しており財産はお姉さんに譲りたい。推定相続人は姉を含み兄弟姉妹で7人いる。お互いに全財産を同居の相手に相続させるとした自筆証書で法務局保管の方法の説明を行う。
●令和6年1月27日
父が不動産を売却することや相続が近いとのことで譲渡税や相続税の節税の説明、その他贈与や分割についての質問
●令和5年12月7日
ご主人の健康状態は良好でなく、今回共有名義の自宅を売却されて、賃貸に移る予定。子供さんから、財産をきちんとしておいて欲しいと言われている。
●令和5年12月9日
母は賃貸不動産を所有している。兄と私が推定相続人であるが、将来の相続財産を巡ってか、兄嫁から嫌がらせを受けている。
●令和5年12月9日
自宅のマンションについて、夫委託者、長男受託者で信託を組んでいる。別に岡山の貸家を相続時精算課税で長男に贈与している。将来、長男から長女に贈与の契約を交わしているが。・・・
●令和5年12月14日
叔母の作成した遺言書でよいかどうかの相談。自筆証書遺言の作成に関して公認会計士が原案を作成しているが、司法書士がこれでよいか懸念している。
●令和5年11月4日
ご両親が90代で認知症を患い施設に入っている。姉が財産を管理してお金を引き出しているようだが説明がないとのこと。後見人の選任を速やかに申立てるべきか。
●令和5年11月8日
父のいとこには相続人がいないが、父に遺言書らしきものを渡している。ただし、自筆、日付、押印等の要件を満たしていないようで、判断能力さえあるならば、今のうちに遺言書を作成した方がよいと回答。
●令和5年11月18日
亡くなったご主人の名義の不動産を自分が相続したうえで、知人の娘に名義を変えたいとのこと。一旦ご自身へ相続登記をした上で、贈与で移転しないとダメ。
●令和5年11月29日
奥さん、長男、長女3人に遺言して、行方知らずの二男には財産を渡さないつもりであったが、二男に会うことができて、多少なりとも財産を渡すことを考えたいとのこと。遺留分(12分の1)に見合う財産を遺言すればと良いのでは。
暦年贈与と相続時精算課税贈与の節税利用について
贈与には、「暦年贈与」と「相続時精算課税贈与」の2種類があります。
「暦年贈与」は、年110万円まで無税となる贈与で、通常一般にいう贈与はこの贈与をいいます。
「相続時精算課税贈与」は、60歳以上の者からその者の推定相続人及び孫で18歳以上の者に対する贈与で、累積で2,500万円までの贈与が無税となります。経済力のある高齢者世代から教育費や住居費に負担がかかる親世代への資金移動を無税で行うことが可能で、消費の活性化につなげようとの狙いで平成15年から始まったものです。この贈与を選択するのは届出が必要ですが、一度選択すると取り止めることはできず、暦年課税の贈与に戻ることができなくなります。この無税の制度は、贈与者が亡くなった際にその贈与者の相続財産に加算して相続税の対象にする点では、贈与税は課されませんが、相続税の方できっちり補足されてしまいます。
相続税の節税は、暦年贈与で相続税対策を図るのが原則です。1年間に無税の110万円までの金額で贈与を行うケースや贈与税が多少掛かっても相続税との税率の差を利用して贈与を行うケースもあります。また毎年贈与を行うことで、累積した贈与が相続税の節税につながります。
ただし、相続直前の贈与は相続税回避の贈与とみられ、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されて相続税の対象とされています。この、相続開始前3年以内の贈与が令和6年から相続開始前7年以内の贈与に改正され、相続財産に加算される贈与の対象期間が延長されました。(ちなみにこの贈与の加算は110万以下の基礎控除以下の贈与であっても加算しなくてはなりません。)
この改正により、贈与者が高齢者の場合、せっかく贈与しても贈与額が相続財産に加算され相続税対策としての効果が失われる可能性が高まりました。相続が近いと考えられる高齢者の節税のための贈与が節税の効果として機能しなくなります。
では、相続開始前7年以内の贈与に当てはまる確率が高い高齢者の場合の贈与が無駄なのかというと、ここに関しては暦年贈与によらず相続時精算課税による110万円までの贈与をお勧めします。相続時精算課税の贈与でも令和6年から年間110万円以下の金額は基礎控除で課税されなくなった点は、暦年課税の贈与と同様になりましたが、相続開始前7年以内の贈与として相続財産に加算される贈与は、暦年課税の場合が110万以下の金額でも加算対象になるのに対し、一方相続時精算課税の贈与の場合は何故か110万円以下の金額は加算されないこととなっているからです。
この違いを利用して、相続がまもなく発生しそうで、贈与しても相続開始前7年以内の贈与として相続財産に加算されそうだと考えられる場合には、相続時精算課税の贈与を選択して、110万円までの贈与を子や孫に行う方法が有効となります。
つまり、暦年課税の贈与を続けて、そろそろ相続が近いとなれば、相続時精算課税の贈与に切り替えて対策を推し進めるという方法です。